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増加するクマ出没に企業はどう備える?―安全配慮義務と労務リスク対策―
近年、気候変動や都市開発の影響で北海道のヒグマだけでなく
本州都市近郊でもツキノワグマなどの野生動物の出没が増加しています。
これらの大量出没は、労働環境に新たなリスクをもたらし、
企業にはより一層の安全配慮義務が課されています。
今回は、こうした大量出没に対する企業の対応と労務リスク管理のポイントを解説いたします。
1.変わる労働環境と災害リスクの現状
都市部付近でクマが出没し、作業員や通勤者の安全に直結する事案が報告されています。
これらの生物災害は、突発的な自然現象と異なり、
過去のデータや社会状況からある程度「予測可能」なリスクとして把握できるため、
企業は事前に対応を準備すべきとされています。
実際に、最高裁判所の「高槻市サッカー大会落雷被災事件」(最判平成18年3月13日)においても、
予測可能な危険に対する適切な安全配慮義務が企業や主催者に求められることが示されており、
現代の労働環境における災害リスク管理の重要性を裏付けています。
2.企業に課される安全配慮義務とは
労働安全衛生法により、企業は従業員の生命・身体の安全を確保する義務があります。
予測可能な災害に対し、適切な職場環境の管理、迅速な対応策の実施、不測の事態への
備えを求められています。
未対応により事故やトラブルが発生すれば、企業責任を問われる判例も多々あります。
3.実践すべき具体的対応
災害時の正しい行動指針を従業員に周知し、
安全意識を高めるための教育・訓練を継続的に実施しましょう。
実際に大手コンビニエンスストアでは、クマ出没時の行動マニュアルや予防措置の周知を徹底し、
防災訓練では撃退スプレーの使用方法や緊急連絡体制の確認など、
実践的な訓練を重視した施策を2025年10月末から行っています。
こうした継続的な教育活動が、実際の危険回避に直結します。
次に、出没地域の情報を共有し、必要に応じて作業場所の閉鎖や移動制限の実施など、
状況に応じた柔軟な対応を取りましょう。
出勤そのものを抑制し、不要な外出を減らすことも有効な安全対策として有効です。
あわせて、フレックスタイムやテレワークの活用、計画的年次有給休暇の
取得促進などを通じて業務調整を図り、
従業員の安全を最優先とする勤務体制を整備します。
これらの方針を就業規則や社内規定に明文化しておくことで、従業員の安心感を高めることができます。
これらの対策を包括的に実践することで、従業員一人ひとりの安全確保だけでなく、
組織全体の防災力・危機対応力の向上にもつながります。
4.労務リスク管理のポイント
クマ出没による出勤停止は、会社都合の休業と判断される可能性が高く、
労働基準法に基づく休業手当の支払い義務が発生します。
特別休暇との違いを整理し、休暇運用マニュアルを整備することでトラブル防止につながります。
事故防止と合わせ、従業員の生活保障も考慮しましょう。
5.最後に:安全文化の構築に向けて
生物災害は企業のコントロール外のリスクと思われがちですが、適切な備えと対応は企業責任であり、
従業員の安全と企業の信頼を守る鍵です。
弊社では安全配慮義務対応の就業規則策定のお手伝いをいたします。お気軽にご相談ください。
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